日常生活の活動(Practical Life Exercises)
モンテッソーリ教育で、小さなお子さんがまず取り組むのが「日常生活の活動(または練習、訓練)」です。子どもたちは、花びんの水を入れ替え、靴を磨き、ほうきで床を掃きます。手を洗い、衣服を整え、テーブルセッティングをし、静かに椅子に腰かけます。
モンテッソーリ園を見学して、そうした活動には教育的意味がないので、読み書き算数を教えたらいいと考えた大人は、昔からたくさんいたそうです。しかし子どもの視点で世界を見ると、日常生活の活動ほど魅力的なものはありません。それは幼児期の子どもは、大人の行動の真似をしたい=「模倣期」という時期にあるからです。
大人にとって家事はいつもいつも楽しいものではありません。しかし子どもには大人のように家事をすることが憧れです。ですからモンテッソーリ教育では、子どもが扱いやすいサイズの道具を用意して、大人と同じ生活の動きができるように援助していくのです。そして粗大微細な体の動きをコントロールできるようになると同時に、子どもの集中力が伸び、精神面や道徳面も充実してきます。
「家事ばかりやって賢い大人になるの?」と考えられるかもしれません。しかし日常の生活を計画的に行うことは、脳の司令塔である前頭葉を刺激するので、脳を鍛えることができるのだそうです。一流の料理人が頭脳明晰なのは、そういう事も関係しているのだと思います。
こうして幼児期のお子さんは「日常生活の活動」を行いながら、それに並行して「感覚教育」「算数教育」「言語教育」そして「文化教育」にすんなり入っていきます。それはモンテッソーリ教育の環境の中には、読める前から数や文字があり、動植物がいて、それらを表現する豊かな言葉に触れながら生活をしていくからなのです。