“集中現象”で子どもが変わります。
先日、2歳になったばかりの小さな女の子が、レッスン中に深い深い“集中現象”を見せてくれました。なんと25分間もの間、はさみで短冊を切り続けたのです。
モンテッソーリは、活動中の子どもが深い集中を経て心身共にすばらしく成長することを発見しました。ですから私は女の子の集中が途切れないよう、手元の短冊をこっそり補充しながら息をひそめて見守りました。すると「車」、「また車」「今度は、ちょうちょ」と短冊の模様をつぶやいています。目と手だけでなく、見たものを言葉にしながら活動していました。
ところで、はさみを使う時には、目で見て手を動かすだけのようですが、頭の中ではその時、大変複雑な情報処理が行われているようです。
まずはさみを見て(視覚)、位置関係を把握し(体性感覚情報)、手を伸ばし(筋肉など深部感覚)、利き手で取る(触覚)。次に短冊を見て(視覚)、位置関係を把握し(体性感覚情報)、利き手でない手を伸ばし(反対の手の認識、深部感覚)、利き手でない手で取る(触覚)。そして両方の手で別々の動きをするわけですから、活動中の子どもの頭の中は、相当活性化しているのだと思います。
女の子は、はさみを25分使い続けた後、深く息をついて「おしまい」と言い、自分ではさみのトレイを片付けました。女の子は急に大人びて見え、穏やかで芯のある素敵な女性のような表情をしていました。
子どもが今の発達にぴったりの活動を選び、心身が思い通りに動かせたときに起きるのが“集中現象”です。それを経験するごとに子どもは、素晴らしく成長していきます。一人でも多くのお子さんが、一回でも多く、こうした魔法のような時間を経験できるように、お手伝いしたいと思います。